『ラストラブ』(2007)
原作:YOSHI
監督:藤田明二
キャスト:田村正和/伊東美咲/森迫永依/片岡鶴太郎/高島礼子/ユンソナ/細川茂樹
当時、「映画秘宝」の「日本映画縛り首」でも酷評されていた作品で、未見だが内容は知っていた。何故今になってこれを観たかというと、先日、『伊集院光の週末TSUTAYAに行ってこれ借りよう』でみうらじゅんさんがこれをお薦めの1本として選んだからなのだ。近所のTSUTAYAにはもうないかと思ったが、見つかった。
さて観終わった感想は、ダサさの破壊力がとんでもない作品であった。台詞、演技、演出、音楽、ロケーション全てが恥ずかしくて、悶え死にそうになる。殺す気か! こんな凄い作品を埋もれさせておくのはもったいないので紹介する。
アキラ(田村正和)はNYのバードランドで演奏中だ。曲はゆるいテンポの「ビギン・ザ・ビギン」、客はエキストラのアメリカ人で、こんなゆるいジャズとは言えない演奏でも満足げだ。この時点でもう…恥ずかしくて恥ずかしくて、こっちがアメリカのみなさんに謝りたくなる。
マイクに向かって「今日は私の誕生日で、妻と娘をみなさんに紹介したい」
妻の高島礼子がバラの花束をアキラに渡すのだが、床に落ちた花束が映し出される。なんだこれ? アキラが掴み損ねたのか?
時間が飛んで5年後、アキラは横浜にある鶴太郎の旅行代理店で働いている。実は妻がガンで亡くなった後、ミュージシャンを諦め、小学生の娘と供に横浜で暮らしているのだ。
ゴミ出しは父親のアキラの役割なのだが、アキラはゴミの分別をしない男だ! ある朝、ゴミ出し時につなぎを着た伊東美咲にひどく怒られる
「おじさん、ダメダメ! 今日は燃えるゴミの日なの!」
「うふんっ…、昔はごったにして出してたぞ、いいじゃないか、持って行ってくれよ」
「持ち帰ってください! 私は忙しいのでもう行きますから!」と言い、つなぎを脱ぎ、プンプンに怒りながら立ち去って行く伊東美咲であった。
本当にこんなシーンがあるんだって! |
なんて女だ…って表情 |
伊東美咲は神奈川県庁の環境課の職員で、急遽、環境会議のためNYに出張となる(県庁職員がNY出張って…?)。一方ツアーコンダクターとしてアキラもNYへ。飛行機の中で偶然再会する2人。この後さらに3回も偶然に出会う。会い過ぎ。
美咲はNYのコンチネンタル・ホテルに滞在中、婚約者(細川茂樹)の電話で婚約を破棄とされる。細川茂樹の出番短か過ぎ。
その後、ウィスキーのボトルを4本開け泥酔し荒れる美咲。飲み過ぎ。
偶然にも立ち寄ったアキラに『何をしているんだ!」と怒られる。オートロックのコンチネンタル・ホテルのドアが何故開いた?
気分転換にバードランドに行き、まだ飲む2人。酒強過ぎ。
案の定ステージに上げられ、サックスを演奏することとなるが、演奏下手過ぎ。テナーサックスのゆったりしたソロから始まる「ビギン・ザ・ビギン」て何なんだ。
アキラと美咲の会話シーンがとにかく酷い。例えば
「うふんっ…今まで女性に、愛してるって言ったことはあるが、ありがとうって言ったことはなかったな、うふんっ…、ありがとう」
「じゃあ、愛してるって言ってみて、うふっ」
だいたいがこんな(こっぱずかしい)台詞なのだが、田村正和は声が出なく聞き取りづらい。ここまで年取ったのかと本当に残念だ。さらに「うふんっ」多過ぎ。美咲は美咲で体型も棒だが、台詞も棒読みだ。
日本に帰国後、アキラの娘、佐和は偶然、美咲と知り合う。佐和に連れられて美咲はアキラと再会する。どこまでも偶然に左右される脚本だ。
美咲は断りもなく突然、「今日から佐和ちゃんの友達よ」と子犬を娘にプレゼントする。この映画は「難病」「片親」「子犬」とケータイ小説のアイテムで作られている。
その子犬が逃げ出し、美咲も一緒に探す。「ワンちゃーん! ワンちゃーん!」って、名前くらい付けろ。
プロモーターのユンソナに、またジャズをやらないかと口説かれ、すぐにやる気になるアキラ。妻の死はどこ行った。ユンソナは日本語下手過ぎ。
アキラもまた妻と同じ病気、ガンで余命3か月と宣告される。チッ!
波止場で泣くアキラ、昭和か |
「うふっ、ラスベガスは好きじゃない。もし俺が倒れたらどうするんだ?」
「それがあなたでしょう、このままここで終わるつもり?」
娘の心配はないのか?
NYのライブ後、倒れるアキラ |
美咲はアキラを追ってNYに来た。彼のプレイをこっそりと覗く。またもや「ビギン・ザ・ビギン」だ。田村正和はこれしか演奏できないのだ。それでも練習して実際に吹いている。美咲は号泣だ。そして会場を立ち去る。
アキラはよろける足で美咲を追う。セントラルパークの落ち葉が舞う中、二人は抱きしめ合う。クリスマス後の極寒の季節なのだが、この映画のNYは紅葉が奇麗な初秋のようだ。
ここまでセックスどころかキスもない関係だが、アキラの体は限界でそれどころじゃない。大木の下で寄り添う2人。本来なら感動なのだろうが…
笑わないではいられない |
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