2014年3月8日土曜日

『コンプライアンス 服従の心理』

Compliance (2012)
Director: Craig Zobel
Writer: Craig Zobel
Stars: Ann Dowd, Dreama Walker

 かつて町山さんが『たまむすび』で解説(2012/9/11)されていた映画が、日本では2013年に公開され、DVDで観る。


 アメリカのあるファストフード店。朝からトラブル続きで、大忙しの金曜日だ。そこへ警察官を名乗る男から一本の電話が入る。その男は、19歳の女性店員に窃盗の疑いがかかっていると言い、店長のサンドラに、その女性店員の身体検査を命じた。警察官の言うことならと、サンドラはその指示に忠実に従うことに。その後さらに行為はエスカレートしていく……という話。

 映画を観ている間、沸々と怒りが込み上げてくる……。おそらく誰もが同じ感情を持つだろう。警察と名乗る男のおかしな指示に、なぜ疑問を感じることなく従うのか? 少女の服を脱がせ、放置し、さらには屈辱的な行為に及ぶ……そのことに何も感じないのか? そう、登場人物たちは、電話で話している警察官に全ての責任があるのだと勘違いしているのだ。
 
 2004年にケンタッキー州マウントワシントンのファーストフード店(Mで始まるバーガーショップ)で起きた実際の事件が、この映画の元となっている。映画はほぼ事実に忠実だ。女性店長の婚約者が呼ばれ、性的な虐待を行ったというのも事実だ。いや、事実はもっと酷い……。婚約者の男は命令されるままに、「金を探すという目的」で性器に指をインサートしたり、フェラチオを強要させたりしている(これは何の目的なんだ!…映画内でもそういう行為があったことを臭わせている)。
 
 同様の事件が2004年までに、30の州で70件も起きていた。捕まった犯人は37歳の男で、私設刑務所に勤める職員で、警察の内部には詳しかったという。素人はそれで、本物の警察官だと騙された。また上記の婚約者だった男も、性的虐待の容疑で逮捕された。もちろん婚約も解消だ。

 ミルグラム実験というものがある。イエール大の心理学者スタンレー・ミルグラムが行った実験で、人はいかに簡単に権威や命令に従ってしまうのかを実証したのだった。もしかすると警察オタクのこの犯人もこの実験を知っていたのかもしれない。
 
 映画の最後で女性店長が、TVのインタビューに答える。
「被害者の彼女とは立場は勿論違うが、私だって被害者なのよ」
周りはいい店長だとの評価だが、こういう人が最も冷酷だ。いいかげんに見える男子アルバイトが実はまともだった……あと少しの勇気さえあれば。

■実際のニュース映像


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