2014年3月20日木曜日

Saul Bass (1970 - 1995) Archive3

Saul Bass
.........................................................................................................................
Such Good Friends (1971)
Director: Otto Preminger


Phase IV (1974)
Director: Saul Bass
ソール・バス監督のSFホラー


That's Entertainment, Part II (1976)(ドキュメンタリー)
Director: Gene Kelly



Alien (1979)
Director: Ridley Scott


The Human Factor (1979)
Director: Otto Preminger



『ケープ・フィアー』 Cape Fear (1991)
Director: Martin Scorsese


『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』 The Age of Innocence (1993)
Director: Martin Scorsese

A Personal Journey with Martin Scorsese Through American Movies (1995)
(TVドキュメンタリー)
Directors: Martin Scorsese, Michael Henry Wilson

Casino (1995)
Directors: Martin Scorsese


.........................................................................................................................

ソール・バスに影響を受けた作品


『パニック・ルーム』 Panic Room (2002)
Director: David Fincher

『北北西に進路を取れ』風の、背景パースに合わせたタイポグラフィー



『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』 Catch Me if You Can (2002)
Director: Steven Spielberg

いかにもソール・バス風のアニメーション

現代のタイトル・デザイナーの第一人者、カイル・クーパーのインタビュー
Kyle Cooper interview on title design: Part 1/2
Kyle Cooper interview on title design: Part 2/2

Saul Bass (1960 - 1969) Archive2

Saul Bass


.........................................................................................................................
『サイコ』 Psycho (1960)
Director: Alfred Hitchcock

ソール・バスは「シャワー」のシーンの絵コンテも描いた
『オーシャンと十一人の仲間』 Ocean's Eleven (1960)
Director: Lewis Milestone

『スパルタカス』 Spartacus (1960)
Director: Stanley Kubrick
アフリカン・アートの影響かな(仕事部屋にアフリカの人形を飾っている)


『よろめき珍道中』 The Facts of Life (1960)
Director: Melvin Frank


『栄光への脱出』 Exodus (1960)
Director: Otto Preminger



『ウエスト・サイド物語』 West Side Story (1961)
Directors: Jerome Robbins, Robert Wise

Something Wild (1961)
Director: Jack Garfein


『荒野を歩け』 Walk on the Wild Side(1962)
Director: Edward Dmytryk

絵コンテ

『野望の系列』 Advise and Consent (1962)
Director: Otto Preminger

『おかしなおかしなおかしな世界』 It's a Mad, Mad, Mad, Mad World (1963)
Director: Stanley Kramer

『枢機卿 』The Cardinal (1963)Director: Otto Preminger


『危険な道』 In Harm's Way (1965)
Director: Otto Preminger

Opening

Ending

『バニー・レークは行方不明』 Bunny Lake Is Missing (1965)
Director: Otto Preminger


『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転進』 Seconds(1966)
Director: John Frankenheimer


『グラン・プリ』 Grand Prix (1966)
Director: John Frankenheimer


Why Man Creates (1968) (短編ドキュメンタリー)
Director: Saul Bass

Saul Bass (1954 - 1959) Archive1


ソール・バス(1920 - 1996)
ニューヨーク出身のグラフィック・デザイナー

ソール・バスのオープニング・タイトルを観たなら、映画館を出てもいい。
なぜなら、その数分間で、どんな映画か分かるからだ」と言われている。

ソール・バスのタイトル・デザインのアーカイブを年代順にまとめてみた。
.........................................................................................................................

『カルメン』 Carmen Jones (1954)
Director: Otto Preminger

『七年目の浮気』 The Seven Year Itch (1955)
Director: Billy Wilder


『悪徳』 The Big Knife (1955)
Director: Robert Aldrich


『黄金の腕』 The Man with the Golden Arm (1955)
Director: Otto Preminger



Storm Center (1956)
Director:Daniel Taradash

『攻撃』 Attack (1956)
Director: Robert Aldrich


『80日間世界一周』 Around The World In 80 Days(1956)
Director:Michael Anderson


Edge of the City (1957)
Director:Martin Ritt


『聖女ジャンヌ・ダーク』 Saint Joan (1957)
Director: Otto Preminger



『誇りと情熱』 The Pride and the Passion (1957)
Director: Stanley Kramer


Cowboy (1958)
Director: Delmer Daves


Bonjour tristesse (1958)
Director: Otto Preminger


『めまい』 Vertigo (1958)
Director: Alfred Hitchcock


大いなる西武 The Big Country (1958)

Director: William Wyler


『或る殺人』 Anatomy of a murder (1959)
Director: Otto Preminger


『北北西に進路を取れ』 North by Northwest(1959)
Director: Alfred Hitchcock

2014年3月8日土曜日

『コンプライアンス 服従の心理』

Compliance (2012)
Director: Craig Zobel
Writer: Craig Zobel
Stars: Ann Dowd, Dreama Walker

 かつて町山さんが『たまむすび』で解説(2012/9/11)されていた映画が、日本では2013年に公開され、DVDで観る。


 アメリカのあるファストフード店。朝からトラブル続きで、大忙しの金曜日だ。そこへ警察官を名乗る男から一本の電話が入る。その男は、19歳の女性店員に窃盗の疑いがかかっていると言い、店長のサンドラに、その女性店員の身体検査を命じた。警察官の言うことならと、サンドラはその指示に忠実に従うことに。その後さらに行為はエスカレートしていく……という話。

 映画を観ている間、沸々と怒りが込み上げてくる……。おそらく誰もが同じ感情を持つだろう。警察と名乗る男のおかしな指示に、なぜ疑問を感じることなく従うのか? 少女の服を脱がせ、放置し、さらには屈辱的な行為に及ぶ……そのことに何も感じないのか? そう、登場人物たちは、電話で話している警察官に全ての責任があるのだと勘違いしているのだ。
 
 2004年にケンタッキー州マウントワシントンのファーストフード店(Mで始まるバーガーショップ)で起きた実際の事件が、この映画の元となっている。映画はほぼ事実に忠実だ。女性店長の婚約者が呼ばれ、性的な虐待を行ったというのも事実だ。いや、事実はもっと酷い……。婚約者の男は命令されるままに、「金を探すという目的」で性器に指をインサートしたり、フェラチオを強要させたりしている(これは何の目的なんだ!…映画内でもそういう行為があったことを臭わせている)。
 
 同様の事件が2004年までに、30の州で70件も起きていた。捕まった犯人は37歳の男で、私設刑務所に勤める職員で、警察の内部には詳しかったという。素人はそれで、本物の警察官だと騙された。また上記の婚約者だった男も、性的虐待の容疑で逮捕された。もちろん婚約も解消だ。

 ミルグラム実験というものがある。イエール大の心理学者スタンレー・ミルグラムが行った実験で、人はいかに簡単に権威や命令に従ってしまうのかを実証したのだった。もしかすると警察オタクのこの犯人もこの実験を知っていたのかもしれない。
 
 映画の最後で女性店長が、TVのインタビューに答える。
「被害者の彼女とは立場は勿論違うが、私だって被害者なのよ」
周りはいい店長だとの評価だが、こういう人が最も冷酷だ。いいかげんに見える男子アルバイトが実はまともだった……あと少しの勇気さえあれば。

■実際のニュース映像


2014年3月2日日曜日

『Rush (ラッシュ/プライドと友情)』Niki Lauda vs James Hunt



『Rush』(2013)
Director: Ron Howard
Writer: Peter Morgan
Stars: Daniel Brühl, Chris Hemsworth

 1976年、チャンピオンを競い、壮絶なバトルを繰り広げていたF1ドライバー、ニキ・ラウダとジェームス・ハント。この時、僕はまだ小3でF1を知らなかったが、その後スーパーカー・ブームと共にF1にも興味を持った。部屋にはマクラーレンのポスターを張り、F1カーのプラモデル(タミヤ)も何台か作っていたが、TVでレースを観ることはできなかった。
1976年 J・ハントのマシン
1975年 N・ラウダがチャンピオンになったマシン

1976年 タイレル P34(6輪さ!) 
1977年 ロータス タイプ78(マリオ・アンドレッティ)
 『Rush』は1976年のF1チャンピオン・レースの行方を追い、70年代へのタイム・スリップを体感できる映画だった。あの時代のマシンが目の前で走っているなんて!……これだけのマシンの数々を集めたことに驚いた。実際にはF3の車体を改造して再現したという。
James Hunt(Chris Hemsworth),Niki Lauda(Daniel Brühl) 
Daniel Brühl,Ron Howard

  ニキ・ラウダを演じるのはダニエル・ブリュール、ジェームズ・ハントはクリス・ヘムズワース。マシンだけでなく人物の再現度も高い

(リアル)N・ラウダ、(リアル)J・ハント
(リアル)N・ラウダ
(リアル)J・ハント

 ダニエル・ブリュールは出っ歯の前歯を付け(そのためJ・ハントに「ネズミ」とからかわれている)、ドイツ語訛りの英語でN・ラウダの喋り方も似せた。一方クリス・ヘムズワースは『マイティ・ソー』では神の戦士だったが、この役のためにダイエットし、サーキットの壊し屋 "Hunt the Shunt"、女性経験数も神級の男(その数5千人!)、ハンドルを握るロック・スター、J・ハントに変身した

 『Rush』が公開されると知った時、疑問に感じたことがある。なぜ今、N・ラウダとJ・ハント? 監督がアメリカ人のロン・ハワード? ドキュメンタリーではなく、そっくりな役者を使っての映画って?
 イギリス人脚本家のP・ローガンとアメリカ人監督のR・ハワードは2008年に『フロスト×ニクソン』を製作した。元大統領のニクソンに対するテレビ司会者のフロストの関係を描き、70年代を舞台にした映画だ。今回、P・ローガンは何度もオーストリアの英雄、N・ラウダにインタビューを試み、1976年のJ・ハントとの熾烈なタイトル争いを脚本にした。『フロスト×ニクソン』も『Rush』も、70年代が舞台で、2人の男の対峙を描くという部分で共通している。監督のR・ハワードはオファーを受けた当初、F1をよく知らなかったのだが、この脚本に惹かれた。アメリカではインディカーやNASCARの方が人気が高いのだ。

 レースシーンの撮影はイギリスとニュルブルクリンク(ドイツ)で行われた。富士スピードウェイのシーンは日本ではない……ノーフォーク(イギリス)だったのだ! てっきり日本で撮影したのかと思った。同じくブラジル、イタリア、スペインのサーキットもイギリス国内に偽物を造った。

 この映画では、2人の男を全く対照的なキャラクターとして描く。J・ハントがこう語る
俺たちレーサーが女たちに何故モテるのか? それは同じ場所をぐるぐる走るからって尊敬されている訳じゃない。俺たちは常に死に直面している。死に近づく程、生きているって実感する……女たちもそれを感じるんだろう。女を抱いて、レースに出る……それだけさ……例え最後になったとしてもね

 一方、N・ラウダは初めて会った女性の車で田舎道を駅まで送ってもらうことに。N・ラウダは車の音だけで、幾つかの故障箇所を言い当てるが、その女性は整備に出したばかりだからと信じない。遂にその車は煙を吐いてストップしてしまった。N・ラウダはドライバーとしてだけでなく、エンジニアとしても一流だったのだ。ヒッチハイクで乗せてもらえた車を運転するN・ラウダに、後部座席の若者2人が興奮して言う…
「俺たちの車を運転しているなんて夢のようだ!」
助手席の女性はN・ラウダが誰だか知らない
「この人有名なの?」
「フェラーリと契約したあのN・ラウダだよ! 知らないの?」
レーサーってサラサラのロングヘアーに、シャツの胸を開けているのじゃないの? この人全然違うし。しかも運転もゆっくりでジジ臭いし…、ねえ速く走ってみてよ」 
N・ラウダは思い切りアクセルを踏み込むと、若者達は奇声を上げて喜んだ。スピードに凍り付く女性は後の夫人、マルレーヌであった。
このシーンが良かったね
1976年8月1日、第10戦ドイツGP、最も危険だと言われるニュルブルクリンク・サーキット、加えて最悪の悪天候の中、N・ラウダはクラッシュし、大火傷を頭部に負う。この時の優勝者はJ・ハント。この年以後、危険だという理由でニュルブルクリンクではF1は開催されていない。
この時のタイトル・ポイント、 N・ラウダ:61pt J・ハント:35pt

 その後15戦までの結果は以下の通り
第11戦オーストリアGP(8/15) N・ラウダ(欠場):61pt J・ハント(4位):38pt
第12戦オランダGP(8/29) N・ラウダ(欠場):61pt J・ハント(1位):47pt
第13戦イタリアGP(9/12) N・ラウダ(4位):64pt J・ハント(リタイヤ):47pt
            (N・ラウダが約1か月ぶりで奇跡の復帰!)
第14戦カナダGP(10/3) N・ラウダ(8位):64pt J・ハント(1位):56pt
第15戦アメリカGP(10/10) N・ラウダ(3位):68pt J・ハント(1位):65pt

 さて最終の第16戦は初開催となった富士スピードウェイだった。J・ハントが猛烈に追い上げ、N・ラウダと僅か3ポイント差となった。J・ハントは何としても3位以内に入り、ポイントを重ねないといけない。
 そして10月24日当日は、大雨……。ドイツGPでの悪夢が再び……という話。

 ラストは期待し過ぎた…。そう、僕は映画自体の結末も70年代風に、ニューシネマ的なものを期待していたのだ。N・ラウダの取った行動にフォーカスし、夫人とともにレースを見つめ、静かに考る……。この映画はそうではなかった。J・ハントにフォーカスを移したのだ。もう誰がチャンピオンかは興味外のような気がする。そして映画自体も結末に向けて「Rush」し過ぎたのではないか。

 この映画のドラマは1976年までで、最後はN・ラウダのナレーションで締めくくる。
 その後の2人の人生も興味深い。J・ハントの年間チャンピオンはこの年だけであった。1977年の日本GPでの優勝を最後に、優勝からも遠ざかった。1979年にウルフ・チームに移籍したが成績がぱっとせず、シーズン途中で引退した。引退後はBBCのF1解説者となったが、1993年に心臓発作により、45歳の若さで死去する。
 N・ラウダは1985年まで現役を続け、年間タイトルを3度取った。引退後は航空会社を経営するなど実業家としても活躍している。

N・ラウダ「J・ハントは45歳で亡くなった。驚きはしなかったが、ただその時は哀しかった。私が羨ましいと思ったのは彼だけだった

映画内でのF3のJ・ハントのマシン
N・ラウダとJ・ハントという同時代に生きた2人の天才。僕なら肩入れしたいのは勿論N・ラウダだ。だが羨ましいのはやはりJ・ハントだ……5千人だからね。
 
Niki Lauda vs James Hunt - Documental BBC
映画はハンス・ジマーの音楽も含め、エキサイティングなアクションは現代のアメリカの若者にも受け入れられるろう。このBBCのドキュメントは僕らオールド・ファン向きだ。音楽だって70'sさ……70'sは僕らのゴールデン・エイジなんだ。